TR 2SA627-2SD188
パワーアンプ兼パワーIVC
蘇り
・7年前に製作したSiC-MOS SCT2450KE 完全対称型パワーIVC。 ・解体。 |
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・2SA627−2SD188 不完全対称型パワーアンプ兼パワーIVCに模様替え。 ・その実は、21年前に作り、とうに解体したヘッドフォン(も鳴る)アンプ最初期型の蘇り。 ・筐体を使いまわし、製作もメンテナンスも容易な基板吊り下げ式で製作。 |
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・回路はこう。 ・蘇り。 ・終段のアイドリング電流は14mA。 ・初段の動作電流も0.3mA程度と、最初期型。 ・が、GOA抵抗がない。 ・不完全対称用抵抗もない。 ・不完全対称型? |
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・そのゲイン-周波数特性。 ・負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)としたパラメトリック解析。 ・まさしく不完全対称型。 ・何故か? ・まぁ、こういうもの。 ・この辺は、バッテリードライブ 不完全対称型DCパワーアンプで観て、これを”普通型”としたが、要すれば不完全対称型。終段ダーリントントランジスタの入力インピーダンスがそのままトランスインピーダンスになっている。 ・赤のオープンゲインと青のループゲインは、下から負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩの場合。緑はクローズドゲイン。 ・赤のオープンゲインは、4Ω負荷時69.1dB、8Ω負荷時74.5dB、16Ω負荷時79.4dB、32Ω負荷時83.6dB、64Ω負荷時86.9dB、100kΩ負荷時92.1dB。 ・青のループゲインは、4Ω負荷時42.4dB、8Ω負荷時47.8dB、16Ω負荷時52.8dB、32Ω負荷時57.0dB、64Ω負荷時60.2dB、100kΩ負荷時65.4dB。 ・緑のクローズドゲインは26.7dB程度。 |
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・0.55Vp−p100kHz正弦波を入力し、各部の動作を観る。 ・負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)とした場合のパラメトリック解析。 |
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・1番下が出力電位、下から2番目が終段上下パワートランジスタそれぞれのコレクタ電流値。 ・電圧推移のピークが±12V強だが、±15V電源なので、この辺が出力限界。 ・100kHz正弦波だが、貫通電流は生じていない。 ・上から2番目が、終段プッシュプルドライバーのコレクタ電流値と終段パワートランジスタのベース―ベース間のC2=1uFに流れる電流値の推移。1番上が終段パワートランジスタのパラのベース電流値の推移。 ・いずれにも、終段パワートランジスタのスイッチング時にパルス的な電流増加が観られる。 ・貫通電流の原因である終段トランジスタのCob等の入力容量等の充放電のための電流だが、C2に流れる電流のお陰で充放電電流が足り、終段上下パワートランジスタのコレクタ電流に貫通電流が生じない。 |
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・同くC2=1uFを無くした場合。 |
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・終段上下パワートランジスタのコレクタ電流のスイッチング時に僅かに貫通電流が生じている。 |
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・その辺は、±0.55Vp−p100kHz方形波入力の方が分かりやすい。 ・負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)とした場合のパラメトリック解析。 ・まず、C2=1uFがある場合。 |
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・一番下が出力波形。当然だが、どの負荷でも同じ波形。 ・下から2番目が終段上下トランジスタのコレクタ電流値だが、貫通電流は見られない。 ・上から2番目が、終段をドライブする2SC959と2SA606のコレクタ電流値とC2に流れる電流値の推移。1番上が終段パワートランジスタのパラのベース電流値の推移。 ・いずれにも、終段パワートランジスタのスイッチング時にパルス的な電流増加が観られるが、赤で示したC2=1uFに流れる電流がかなめ。 |
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・同じく、C2=1uFを無くした場合。 |
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・一番下が出力波形。特に変化はない。 ・下から2番目が終段上下トランジスタのコレクタ電流値だが、方形波の立上り、立下り時に貫通電流が生じている。 ・上から2番目が、終段をドライブする2SC959と2SA606のコレクタ電流値の推移、1番上が終段パワートランジスタのパラのベース電流値の推移だが、C2=1uFの助けがなくなったためかそのピーク電流値が小さくなっている。 ・そのため終段上下トランジスタのCob等の充放電に遅れが生じ、コレクタ電流の立下りの遅れ、貫通電流が発生するのだろう。 ・が、通常こういう方形波のような高周波はアンプに入力されることはないので、C2は必要ない。が、あって悪いことはないので入れておく。 |
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・電流注入法で出力インピーダンスを観る。 |
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・低域で28mΩ、100kHzで177mΩ。 |
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・歪率を観る。 ・リチウムイオン電池の容量は大きいので4Ω負荷にも対応するし、アンプ自体も4Ωで20W出力に必要なピーク電流3.162Aは問題なく出力できる。ので、4Ω負荷の場合の歪率も観る。 |
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・1kHzと10kHzについては、グラフの下が8Ωの場合、上が4Ωの場合。 ・負荷4Ωの場合、NFB量がほぼ半分になるので、歪率はほぼ倍になっている。のは理屈。 ・負荷4Ωの場合も8Ωの場合も、何故か10kHzの方が歪率が小さい。何故か? 知らない。 ・100kHzについては流石にそうはいかず、概ねその10倍程度の歪率になっている。100kHzのループゲイン≒NFB量は10kHz以下の周波数より概ね20dB小さい、即ち概ね1/10なので、歪率が概ね10倍になるのは理屈。 ・1kHzでは0.1%以下、10kHzでも0.2%以下だが、1%以下を可とすれば、100kHzでも8Ω負荷で8W、4Ω負荷で16Wの出力が得られるようだ。 |
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・GOA抵抗を加えるとGOAパワーアンプ。 |
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・そのゲイン-周波数特性。 ・負荷を4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩ(負荷オープン相当)としたパラメトリック解析。 ・赤のオープンゲインと青のループゲインは、負荷による差は少ないが、下から負荷が4Ω、8Ω、16Ω、32Ω、64Ω、100kΩの場合。緑はクローズドゲイン。 ・赤のオープンゲインは、4Ω負荷時の47.1dBから100kΩ負荷時の49.8dBの間。 ・青のループゲインは、4Ω負荷時の20.4dBから100kΩ負荷時の23.1dBの間。 ・緑のクローズドゲインは26.1dB程度。 ・低域のオープンゲイン及びループゲイン≒NFB量は20dB以上少なくなった。 ・またそのせいか、クローズドゲインも理屈の26.7dBに0.6dB足りない。 ・GOAにすると、オープンゲインが低域から20kHzまでほぼ同じになって、その結果、ループゲイン≒NFB量も可聴帯域の低域から20kHz程度まで一定になって、良さ気? |
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・電流注入法で出力インピーダンスを観る。 |
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・低域で94mΩ、100kHzで193mΩ。 ・不完全対称型に比すとやや高い。 |
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・歪率を観る。 | ||
・比較のために、パワーアンプ兼パワーIVCの結果をあわせて表示。 ・低域でループゲイン≒NFB量が20dB以上少ないにも関わらず、殆ど同じ。 ・これは、オーバーオール負帰還量は減ったが、終段が電流ドライブのフォロア動作から電圧ドライブのフォロア動作となり、終段自体に20dB程度のローカル負帰還が掛るようになったため。要するにトータル負帰還量にはそれ程変化がない。 ・GOAの場合も何故か10kHzの方が1kHzより歪率が小さい。 ・何故か? 知らない。 ・が、不完全対称型でもそうなので、GOAにしてループゲイン≒NFB量が低域から20kHz程度まで一定になったせいではない。 ・100kHzについては、GOAもパワーアンプ兼パワーIVCの歪率と同程度の歪率になっている。2W以上ではGOAの方がやや歪率が小さい。 ・また、GOAの方が8Ω10W時、4Ω20W時の歪率が小さい。 ・のは、GOAのクローズドゲインがちょっと少なくなったために、同じ入力電圧に対して出力電圧がやや小さくなり、実際の出力が10W(20W)未満になったため。本当は入力電圧を調整して正確に測るべきだが、面倒なので。 |
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・回路はこう。 |
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・電源の電流制限は3.2A程度。 ・8Ω負荷に10W出力するために必要な最大電流は1.581Aだが、4Ω負荷に20W出力するために必要な最大電流は3.162A。 ・リチウムイオンバッテリーは容量が大きく4Ω負荷にも対応するのでこの設定。 ・実際使用するのは8Ωスピーカーであって、4Ωスピーカーを鳴らそうとするものではないので、この辺で。 |
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・アンプ部基板。 | ||
・保護回路部に追加した電流検出基板。 |
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・調整しながら配線をし、 |
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・出来上がり。 ・早速、音出し。 |
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・楽観。 |
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・諦観。 |
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・哀歓。 ・音の良し悪しあれど、皆情感豊か。 |
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・ヘッドフォンも聴く。 ・ヘッドフォン端子を付けて、アンプ出力にそのままつないだだけ。 ・年代物のHD600。 ・ヘッドフォンは、STAXのイヤースピーカーに勝るものはないので、ずっと放っておいたが、こうして聴くとこれも素晴らしい。 ・ヘッドフォン(も鳴る)アンプ最初期型の蘇り。実に良い。 |
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・哀歓悲喜。 |
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・蘇った古いアンプ。 ・一番古いものが、... |
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20021年11月24日
メンテナンス(位相補正を見直す)
横軸20uS/div、縦軸下は0.05V/div、上は0.5V/div | |
・シミュレーションはあくまでシミュレーション。 ・実際の方形波応答をオシロで観る。 ・10kHz方形波応答。 ・下が入力波形で上が出力波形。 ・輝線に何かまとわりついているが、カメラ等の観測環境のせいなのでそれは無視。 ・出力波形には、立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートが出ている。 ・この辺の細部は100kHz方形波入力で、より分かりやすい。 |
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横軸2uS/div、縦軸下は0.05V/div、上は0.5V/div | |
・100kHz方形波応答。 ・下が入力波形で上が出力波形。 ・入力波形にもオーバーシュート、アンダーシュートが出て、リンギングもあるが、オシロのせいか、プローブの付け方が悪いのか、が原因で、本来の入力波形にはない。 ・出力波形に、立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートが出ているし、リンギングもある。 ・位相補正がちょっと不足のようだ。 |
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横軸20uS/div、縦軸下は0.05V/div、上は0.5V/div | |
・位相補正を5pFから10pFに変更。 ・10kHz方形波応答。 ・下が入力波形で上が出力波形。 ・出力波形にはオーバーシュートもアンダーシュートもなさそうだ。 ・が、何かありそうな感じもある。 |
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横軸2uS/div、縦軸下は0.05V/div、上は0.5V/div | |
・100kHz方形波応答。 ・下が入力波形で上が出力波形。 ・出力波形に、ごく僅かに立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートが出ている。 ・が、ごく僅かに1波で、リンギングもない。 ・位相補正は10pFが良いようだ。 |
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・上のLTspiceのシミュレーションでは位相補正は5pFでも良い結果が得られる、との結果だったが、現実にオシロで観ると、そのような結果ではないことが分かった。 ・方形波応答の結果を左右するのは右図で言えばQ5のQ2SA606であり、そのモデルのCJE、CJC、TFの数値次第のよう。 ・これまでのモデルではCJEの数値が良すぎたようなので、この際その数値を弄ってみた。 ・数値を弄った後のQ2SA606でシミュレーションしてみよう。 ・位相補正のC1=5pFでの100kHz方形波応答。 |
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・下が入力波形で、上が出力波形。 ・出力波形は、オシロの応答にそっくりになった。 |
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・次は、位相補正のC1=10pFでの100kHz方形波応答。 |
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・これも、出力波形はオシロの応答にそっくりになった。 ・これからは、シミュレーションでは、モデル数値変更後のQ2SA606を使おう。 |
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・ところで、今更20年以上前のアナログブラウン管オシロの時代でもないか。重いし。 ・という訳で、今時のデジタルミニミニハンディオシロでも観てみる。 ・先ずは10kHz方形波。 ・位相補正は10pF。下が入力波形で上が出力波形。 ・輝線が太いのが今一。もっと高級なものにしないとダメかな。 ・立上りと立下りに僅かにオーバーシュートとアンダーシュートがあるようにも見えるがどうか。 |
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・次に100kHz方形波。 ・20年以上前のアナログブラウン管オシロの出力波形と同じく、出力波形に、ごく僅かに立上り時のオーバーシュートと立下り時のアンダーシュートが出ている。ごく僅かに1波で、リンギングもない。ように見える。 ・やはり、位相補正は10pFで良いね。 |
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・実は、以上のオシロ写真はアンプの負荷がオープン状態で観たもの。 ・この際、アンプ出力に8Ω抵抗を繋いだ場合の方形波応答を観てみる。 ・先ずは10kHz方形波。 ・上の出力波形は余り問題ないように見えるが、何故か下の入力波形にオーバーシュートとアンダーシュートが出ている。何故か? |
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・次に100kHz方形波。 ・上の出力波形には僅かなオーバーシュートとアンダーシュートの他に多少リンギングもあるかなといった波形だが、基本無負荷の場合と余り変わらない。 ・ところが下の入力波形の方はなかなかのリンギングが生じている。 ・何故か?出力から入力側にフィードバックがあるから? ・知らない。 |
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・ここで、CJEの数値修正後のQ2SA606で、負荷8Ωの場合の100kHz方形波応答を観る。 |
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・オシロの出力波形とはちょっと異なる。 ・シミュレーション。難しい。 |
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・と言うことは置いておいて、音楽を聴こう。 ・アマゾンミュージック音源をDSP-PAVOでストリーミング再生。 ・位相補正を5pFから10pFに変更して音はどう変わったか? ・それが分かったら先生になれる。 ・が、幸か不幸か私には聞き分けられない。 ・まぁ、おかげでどの音源でも、楽しく聴ける。(爆) ・要は良い音。 |
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・という訳で、全回路図はこう。 ・アンプ部の位相補正が5pFから10pFになっただけ。 |
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20023年11月10日